世界中のウェブサイトについてアクセス情報を収集・解析して提供してくれているアレクサに、新しい機能が追加され、デザインも変更されました。変更点について解説させていただきます。
新デザインの解析結果ページ まず、解析結果ページが全般に渡ってデザイン変更されました。グラデーションやスペースを活用し、Javascript/Ajaxによるナビゲーションで多くのデータがすっきり表示されるようになりました。 新たに追加された機能は三つ。 サイト訪問者の特性(Demographics) ナビゲーションバーの"Demographics"をクリックすることで見られるページ。そのドメインを訪問するユーザについての以下の統計情報をグラフで見ることができます。 - 年代(Age)
- 最終学歴(Education)
- 性別(Gender)
- 子供がいるかどうか(Has Children)
- 家庭・学校・職場いずれからのアクセスか(Browsing Location)
サイト訪問者の特性 | 緑色で右側に突き出ているカテゴリーは、そのドメインへの訪問者が比較的多いユーザ層を示します。赤で左側に伸びている場合は、逆に、その属性のユーザが割合として少ないことを示します。 自らのサイトについて、自分達が予想してターゲットとしていたユーザ層と合致するかをチェックしたり、競合サイトのデータと比較して自社サイトが浸透できていないユーザ層がどこかを調べたりするのに使えるのではないでしょうか。 ただし、アレクサのメインのトラフィック情報と同じく、これらの特性の正確さについて過信するのは避けるべきです。アレクサ・ツールバーを使っている人の情報しかデータに反映されていないのはもちろんですし、このあたりの年齢や性別情報も、ツールバーのダウンロード時に尋ねられる自己申告のアンケート結果をベースにしたものと思われますので、このデータだけを根拠にするのではなく、他の手段でもユーザ特性を収集し、つきあわせた上で活用すべき情報でしょう。 クリックストリーム(Clickstream) そのドメインに訪れた人が、サイトに来る前とサイトから去った後にどのドメインのページを閲覧したか、という情報がこのクリックストリームです。 Upstream Sites(上流サイト)は、今調べているドメインに来る「前」にユーザが見ていたドメインが、ユーザ数の多い順に表示されます。
クリックストリーム | 前に訪問されていたサイトは、自社のサイトであればアクセス解析が集めたリファラー情報から知ることができますが、ライバルサイトに関してはわかりません。アレクサのこのランキングを見れば、どのサイトから他社サイトにアクセスしているのか、というおおまかな情報を知ることができるでしょう。広告ネットワークのドメインがランキングに出ているようであれば、どこに多く広告を出し、ユーザを獲得しているか、ということまで推測できる場合があるかもしれません。 Downstream Sites(下流サイト)は逆に、今見ているドメインを見たユーザが、次にどのドメインのページを見たか、というランキングです。 ここにそのドメインの競合サイトのドメインが多く出ているようであれば、ユーザは今調べているドメインでは問題を解決できずに、競合サイトに行ってしまったのかもしれません。 検索エンジンからの流入割合(Search %) 3つ目の新機能は、Traffic Statsメニューの中のサブメニュー、一番右側にある"Search %"で開くことができます。 ここでは、検索エンジンから来たトラフィックの割合の変動をグラフで見せてくれます。過去のどれぐらいの長さについて見るかは、下部のプルダウンで選択することができます。
検索エンジンからの流入割合 | 検索エンジンからの流入は、絶対数ではなくアクセス全体に対する割合(パーセンテージ)である点には注意してください。
投稿者 秋元 : 11:00 | コメント (1) | トラックバック 2008年07月24日 Alexa(アレクサ)でニコニコ動画のアクセス数が下がってるって本当? Markezine併載コラム
回答: いいえ、アレクサではそんなことはわかりません。 と、Alexa徹底解析講座をお読みいただいた方には言うまでもないことなのですけど。 アレクサのグラフの読み方を理解せずに書かれた次の記事 【トレビアン】ニコニコ動画のアクセス激減!? その原因は…… が一人歩きして、2ちゃんねるを中心に話題になっているようですね。 リンク先の記事では、アレクサのグラフの傾きでニコニコ動画のアクセスが激減(!)していると書かれているのですが、そもそもアレクサのグラフはアクセス数の絶対値のグラフではないし、アレクサのグラフが右下に傾いていても、アクセス数が減っているとは限らないのですからこの主張に意味はありません。 グラフが右肩下がりになる要因 アクセス数の増減と無関係にグラフが右肩下がりになる理由はたくさん考えられるのですが、たとえば、 - 5月に行なわれた統計処理の変更が影響した
- 日本人のAlexaツールバー利用が減った
- ある程度のユーザーがパソコンではなくモバイルからの視聴に移った
といった仮説は立てられます。もちろん、これで全部ではないです。 上記の仮説について解説していきましょう。 2008年5月に統計方法の変更があった 開発者ブログをずっと読んでいるとわかりますが、Alexaは、そもそも非常に少人数のチームで、予算もあまりない部署で運営されているようです。いろいろな欠点は昔から言われているのですが、長らく放置されていました。 しかし、Markezineでもレポートしていますが、今年4月15日に開発者ブログで集計アルゴリズムの変更が行なわれることが予告されています。 この時に、変更の前後でデータの連続性が無くなるかもしれない、ということは仄めかされています。そして、以前は過去5年間にわたって見ることができた過去のトレンドが、2007年の夏以降の分しか見えなくなっています。これも、新旧のデータで整合性が取れなくなったからでしょう。 また、この新システムでは、ツールバー以外のデータも合わせて利用することも言われています。HitwiseのようなISP経由のデータ収集ではとも言われていますが、詳細は不明です。 日本人のAlexaツールバー利用が減った アレクサの統計は世界中を相手にしているので、アジア等のネットの活動が活発になるほど、日本のネットユーザの活動は相対的に小さくなっていきます。つまり、日本のサービスの場合、大きく伸び続けていないサービスはすべて、実際にはアクセスが伸びていてもアレクサでは右肩下がりになる可能性があるのです。 さらに、それに加えて、アレクサツールバーのインストールベースが減少する要因はたくさんあります。 主なものとしては、まず、PCやブラウザの変更。Internet Explorerは6から7に、Firefoxは2から3に移行しつつありますが、PCの買い替えやブラウザのアップデートの際に「使っていない」等の理由でアレクサツールバーを再インストールしないことはあるでしょう。 また、アンチウィルス製品の中には、閲覧しているURLを外部に送信するアレクサ・ツールバーを好ましくないソフトとして排除するものもあります。個人や会社でのアンチウィルス製品の普及によっても、日本人のアレクサツールバー利用は減っている可能性もあります。 パソコンではなくモバイルでの視聴に移った これもアレクサ絡みでは良く見落とす人がいますね。 mixi(ミクシィ)とSecond Life(セカンドライフ)をAlexa(アレクサ)で比べても無意味な理由とは?でも話しましたが、アレクサ・ツールバーが動かない環境、携帯電話やウェブブラウザ以外の独自クライアント等でどれだけアクセスがあっても、アレクサには反映されません。 ニコニコ動画はモバイルもやっていますが、運営者側からみればどちらもサーバへのアクセスは同じです。パソコンで見ていたのがモバイルでも見るようになった人、というのがどれぐらいいるのかわかりませんが、そのような人がどれだけいるか調べずにアレクサでパソコンでしか見ない人の数字の変化を追っても、サーバ側から見たアクセスのトレンドとは違うものしか見えないでしょう。 また、IEやFirefoxといったアレクサツールバーが入る環境以外でニコニコ動画を見ている人も考慮しないといけません。Mac Safariのユーザもそうですし、ニコニコ動画の場合は閲覧用の専用ブラウザもあるので、それらの普及率や利用率も調べないと正しいところはわからないでしょう。 「アレクサはダメ、○○なら信用できる」? また、今回の件でアレクサ以外の方法(ネットレイティングスとかコムスコア)なら信用できる、と書かれている人もいますが、これもそんな単純な話ではありません。 有料でやっていれば正確、というものでもないですし、集めたデータをどのように処理しているか、のところがブラックボックスで見えないのですから、どの会社のデータにしても正確かどうかはわかりません。 ランダムにサンプルを採用しているから、入れたい人がツールバーを入れるアレクサより正確、というような意見についても、そのランダムがどれぐらいランダムなのかというのを検証する必要があるでしょう。携帯ユーザのデータはどこも収集できていませんし、ネットレイティングスは「メガパネル」というアレクサツールバーと同様、申し込みベースでデータ提供者を集める手法も始めています。 米国では、それらの調査会社が宣伝文句通り中立公平にデータを集めていることを監査させようという意見も出てきていますが、今のところは謎の処理で出てきた謎の数字を、「おおむねあっているようだ」という経験から利用者が信用して使うという状態でしかないのです。 それは、CompeteでもGoogle Trends for websiteでもPathtraqでも同じです。インターネットの利用状況を完璧に調べることは無理なのですから、何か一つの数字だけ持ってきて、それで増えた減ったを主張するのは、インターネットの仕組みを理解していないか、あるいは自分の主張したいことに合った結果だけを持ってきている可能性があります。 筆者の所属するサイボウズ・ラボでもPathtraqというのをやっているので、「Pathtraqなら完璧」と言えると格好よいのですが、Pathtraqも、もちろん、完璧ではありません。パネルが日本人ばかりなので、日本での利用者だけについて見るときはアレクサよりいい点はあるかもしれませんが。 人は簡単な答を望むもの 「激減」という言い切りの記事を書けば注目されるでしょうけれど、「よくわからない」では記事にはしづらいでしょうね。 「その情報では減ったかどうかわからない。増えている可能性もある」と長く書いても、よく読まない人や興味が浅い人は読み飛ばすでしょう。 この記事を読まれても、たぶんすっきりしないだろうとは思いますが、ネットは学校のテストじゃないので、なんにでもはっきり白黒がつく解答があるわけではない、ということですね。 [参考] NetRatingsのMegapanelリリース [pdf] 投稿者 秋元 : 13:49 | コメント (2) | トラックバック 2008年01月23日 Alexa(アレクサ)以外の選択肢 MarkeZine併載コラム 第十回 アレクサ解説の第十回は、アレクサの競合サービスにどんなものがあるかについて。 このシリーズは、マーケジンの連載との併載になっている。
アレクサの代わりになるサービスはあるのか? 第7回、第8回では、アレクサ自身が語ることの無い、アレクサのデータの問題点やデータが操作される危険性についてお話してきました。また、第9回では、実際にアレクサのデータを操作できる様々な手法も紹介しました。 そんなにアレクサのデータに問題があるのであれば、なぜたくさんの人がアレクサの情報を参照しているのでしょうか。もっと世の中によいサービスは無いのでしょうか? 今回はアレクサの競合と言われるサービスについて紹介していきたいと思います。 - Nielsen//NetRatings(ニールセン/ネットレイティングス)
- ComScore(コムスコア)
- Hitwise(ヒットワイズ)
- Compete(コンピート)
- Quantcast(クワントキャスト)
- Ranking.com(ランキング・コム)
- PathTraq(パストラック)
Nielsen//NetRatings(ニールセン/ネットレイティングス) Nielsen//NetRatingsは、テレビ視聴率データの提供で有名なニールセンの、インターネット部門を担当するNielsen Online社が提供するインターネットトラフィック統計です。1997年に設立され、1999年からデータ提供を行なっています。 アレクサのように好きなドメインに対して簡単な統計データを得ることはできず、有料でレポートを購入することで、自社ウェブサイトと競合他社とのトラフィック遷移の比較などができます。
Nielsen//NetRatingsのトップページ | データの収集元は大きく二種類に分けられ、新聞社が世論調査で行なうときのようなランダムな抽選によるパネル選出(RDD)が一つ、もう一つは、懸賞つきネット広告などによって募集されています(*)。テレビの視聴率と同様、パネルの詳細(正確な人数や構成)については明かされていません。 日本法人としてネットレイティングス株式会社があり(1999年設立)、日本でのトラフィック統計のランキングや動向をよく発表しています。日本の新聞等のメディアで日本のウェブサイトの利用状況に言及する際に引用されることが多いデータではないかと思います。
ネットレイティングス社発表を元にしたニュースの例 | (*) Nielsen//NetRatingのパネル応募ページ ComScore ComScoreは、アクセス状況をComScoreのサーバに送るフリーウェアを配布することでパネルを確保しています。 ComScoreも昨年(2007年6月)、日本法人コムスコア・ジャパンを設立しました。
ComScoreのトップページ | しかし、コムスコアが2007年9月に発表した日本の検索エンジンシェアについてのレポートでは、2006年9月から2007年9月の一年間でヤフーのシェアが30%近く下落したり、ヤフーとグーグル以外の検索エンジンのシェアが10%以上上昇したり、など、日本での統計データに対して実感とは離れた、疑問を抱かせるような数値が出ています。 このリリースは数値の出方が極端だったこともあっていろいろなメディアで取り上げられましたが、日本のデータについては今後の改善が行われるかを見る必要があるのではと筆者は感じています。ComScoreの「便利なツール」が日本語版で流通していないため、そもそも現状で日本のデータが正しく集まっているのかという話もあります。 参考: 検索シェア縮まる! GoogleがYahoo!を超える日 Hitwise(ヒットワイズ) Hitwiseは、インターネットへの接続業者(ISP)側からデータを集めることで利用者の統計を集めているサービスです。
Hitwiseのトップページ | 会社紹介によれば、米国で1000万人、世界では2500万人のネットユーザの情報を解析し、検索キーワードや訪問したサイト、サイトからサイトへの移動などを追跡しています。 提供しているデータは英語圏中心で、サイトではアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、香港、シンガポールのデータの案内があります。 Compete(コンピート) Competeは米国のみを対象にしたトラフィック統計提供サービスです。Competeは2006年の11月にサービスを開始しました。 200万人のパネルの情報をISPやASP(アプリケーションサービス提供者)、Competeツールバーなどから収集しています。Mac, Linux, Firefox, Safariユーザにも対応しています。
Competeの検索ページ | Competeでは、無料でウェブサイトから統計データを参照できます。年齢、収入、性別、米国内の地域などによってデータを詳細化できるところが、アレクサにはない機能です。統計の時間的な粒度は、アレクサの日別に対し、月別となっています。 後発であることやデータの収集先も多いことから、米国の事情を測定する役には立ちそうですが、そもそもサービス提供外ですので日本では使えないでしょう。 参考: Guy KawasakiによるCompete創業者Stephen DiMarcoへのインタビュー Quantcast(クワントキャスト) Quantcastも、アレクサの代替を狙って開始されたサービスです。
Quantcastの検索ページ | 元々はパネル方式でトラフィックデータを収集していたのに加えて、Javascript埋め込みによるアクセス解析サービスを追加してデータを集めています。 AlexaやCompeteと同様に、統計データは無料でサイトからアクセスできます。性別・年齢・人種・収入などの分布もわかります。 広告主に対して、あるサイトと似た読者層のサイトを列挙して見せるサービスを持っていて、データ提供サイトは優先的に広告主とマッチングさせるということも行っています。また、あるサイトの読者とブランド(航空会社など)との相関を出したりもしていて、これも広告出稿の選定時には役立ちそうです。 対象は米国限定。 参考: Quantcastによるネット視聴率データの無料開放 Ranking.com(ランキング・コム) Ranking.comでは、ブラウザのアクセスを高速化したり、サイトの信頼度を独自の数値(TrustGauge)で表すという機能を持つIEツールバーを無料で配り、そこからユーザアクセスを収集して集計しています。
Ranking.comの検索結果ページ | PathTraq(パストラック) 筆者の所属するサイボウズ・ラボが8月に公開したPathtraq(パストラック)については、リリース直後の第6回でも少し紹介いたしました。 Pathtraq(パストラック)は、希望者のブラウザに閲覧ページのアドレスを提供するためのプラグインをインストールしてもらうことで、参加者から集めた訪問ページの統計を取るサービスです。 アレクサがドメイン毎のデータを取るサービスであるのに対して、ページ毎のアクセス情報が集計される点に特徴があります。
Pathtraq検索結果ページ | 今のところ、パストラックは日本語で提供されている日本語圏を対象としたサービスです。よって、アレクサや今回紹介した他のサービスと比べて、日本の中でのウェブページのアクセスデータをより正しく取れる点が利点となります。(ただしパネルの構成は今後も改善が必要でしょう) |